彫金の線の強弱とハッチング的なエングレービングの組み合わせ表現

日本の伝統工芸の彫金とエングレービングの融合

日本の伝統技法である彫金と海外の金属への装飾技法であるエングレービングは似た技術のようで、それぞれの装飾技法を用いる考え方はかなり違います。

近年ではエッチングとエングレービングを混同されている方も少なくありませんので細かな違いを口うるさく言うのではなく、違いについては個々人が把握しておけばよいとも考えます。

念のため記しておくとエッチングは腐食を利用して模様の形に加工対象の金属を溶かして模様を装飾する方法で、エングレービングは金属用の彫刻刀を使って模様を彫り入れる方法です。

 

彫金とエングレービングの違い

彫金とエングレービングはそれぞれの彫り方や装飾の仕上げ方の細かい部分にこそありますが、彫って装飾するという点では違いはありません。

筆者も海外の方に説明するときはエングレービング装飾だと説明しています。

どのような製品に装飾を用いるかによっても違ってきますが、エングレービング装飾は多くの場合基本的に墨入れをして模様を黒くします。

ではハワイアンジュエリーも同じように墨入れするかというと墨入れはしません。

逆に彫金は墨入れをしないのかというと、墨入れする場合もあるためその点での違いというのは語るのが難しくなります。

明確な違いを上げろというのであれば彫金はタガネを金づちで叩いて手前に彫り進める技術で、エングレービングは手で押して自分から見て奥に彫り進めます。

ただ海外では鑿を逆手にもって金づちで叩き奥に彫り進める技法もあるので、違いは手前に彫り進めるか奥に彫り進めるかという点になるでしょう。

 

立体的な彫り方と表面的な彫りを組み合わせた彫金

片切りタガネを用いて深く彫り、彫った模様に立体的に見える視覚効果を持たせる彫り方をすることで多様な装飾を行い、毛彫りタガネを用いて表面に細かな線を彫り入れることで多角的な見え方を施すことができる彫金。

片切りタガネは筆を用いたつけたてのように強弱を操ることが可能です。

また毛彫りタガネのように細い線を彫れることから毛彫りと名がつくように非常に細い線を彫ることが可能です。

 

これらの技法を組み合わせることで陰影を表現することが可能です。

昭和期に見られた花の略図の彫り方もこれらに習った表現方法といえます。

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