バロック装飾の特徴ともいえるカルトゥーシュの由来
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エジプトから伝わりバロック芸術を代表する装飾となったカルトゥーシュ
カルトゥーシュはヨーロッパの装飾美術において建築や絵画、工芸品など多くの分野で用いられる渦巻状の縁飾りの総称です。
建築ではその装飾自体が立体的に造形され、アンティークアイテムの場合、スターリングシルバー製のたばこ入れやレターケースの表面に装飾が彫り込まれているものが多く見られます。
他にも懐中時計などもありますが、筆者の場合はそれらのアンティークにアレンジの彫金のお仕事をお受けすることが多いので先述した二つに品を代表例としています。
エジプトが起源とされるカルトゥーシュ
カルトゥーシュは古くは古代エジプトのファラオの名前を囲む楕円状の記号です。
「永遠」を意味する記号としてファラオの名目を取り囲み保護しているとされます。
地中海に面した地域の交流によってエジプトからヨーロッパへと伝播し、その後のバロック装飾のカルトゥーシュのもとになっています。
語源自体は古代ギリシア語の「カルテース(パピルスの紙)」と言われており、12世紀ごろにイベリア半島やイタリアに紙が伝来するまでは羊皮紙やパピルスなどを巻物上にして使用していた影響かカルトゥーシュ装飾は巻物を渦巻状の形状を取ることから、和訳では「巻皮装飾」と訳されることもあります。
バロックの過剰装飾によるカルトゥーシュの発展
バロックの過剰な渦巻装飾と合わさったカルトゥーシュは、肥大化する装飾と相まって発展していきます。
誰しも目にしたことがあるような豪奢な額縁のようにそれ自体がメインかと錯覚するほどの趣向が盛り込まれるようになります。
フランソワ1世のフォンテーヌブロー宮殿に見られる漆喰装飾の巻紙状の装飾で強調されたカルトゥーシュが各地で模倣され、18世紀にかけて発展していきました。